名古屋市にある古民家の耐震補強

株式会社アオキ建築は古民家の耐震補強を得意とする建築会社です。

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〒455-0066 愛知県名古屋市港区寛政町5丁目9番地

耐震要素の施工方法
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耐震要素の施工方法

基礎について

 限界耐力計算において、耐震補強の対象となる古民家の建物の柱は安定した基礎または土台の上にあることが前提で、そのためには基礎との一体性が損なわれない設計と施工を行う必要がある。

◆礎石
 鉄筋コンクリートの基礎が普及するまでは、玉石地業の上に自然石を据えて柱を載せただけのものが一般的な基礎であった。
後に、切り石を載せた独立基礎となり、時代の経過とともに地覆石で足元をつなぐ配慮がなされるようになる。
 限界耐力計算での補強は礎石建ちの基礎も適用範囲に含む。
 ※礎石(そせき)とは、柱などを支えて建造物の土台、すなわち礎(いしずえ)となる石のことである。礎石を用いない場合、柱が直接地面と接することから湿気や食害などで腐食や老朽化が早く進んでしまう。
近代以前の建物においては一般的に使われるものであったため、地震による倒壊や焼失をした後でも礎石だけは残り、後世、歴史などを知る貴重な資料となっている。

  

[施工における留意点]
・足固めにより柱の足元を相互に緊結し、床束も根がらみで相互につないでいくことで、1階床レベルの剛性を確保できる。これらの施工は床が高いときには特に重要となる。

     

・礎石の表面を水平に据え、礎石の中心と柱の中心を合わせる。
・地震時、柱が礎石からずり落ちないように礎石は大きなものにする。また、表面を平らに仕上げて安定性を確保する。
・他の基礎にくらべて地面から柱までの距離が近いため、腐食が進みやすい。そのため、できるだけ地面からの高さを確保する必要がある。

◆布基礎・べた基礎
 木造住宅では鉄筋コンクリート造の布基礎を用いるのが一般的である。しかし、地盤がきわめて軟弱な場合には、不同沈下しないよう配慮が必要となる。布基礎やべた基礎の構造については、住宅金融公庫の仕様書等に詳しく記載されているので、ここでは施工上の注意点を述べる。
 ※布基礎(ぬのきそ)とは、長い連続したコンクリートによる基礎のことである。
断面は逆T字形で、基礎底面を広くしている。この幅は、上部からの荷重と地耐力の大小により決定し、鉄筋を用いて補強する。
また、適用箇所は、建築物の外周部や主要な間仕切壁の骨組(軸組)の下、便所・浴室の周りとする。
 ※べた基礎(べたきそ)とは、建築物や設備機械の直下全面を板状の鉄筋コンクリートにした基礎のことである。
布基礎と比べると基礎底面の面積が大きいので、荷重を分散させ地盤やスラブに伝えることができる。
 そのため、不同沈下に対する耐久性や耐震性を増すことが可能となるが、コストは掛かり増しとなる。おもに建築物が重い場合や地耐力が小さい場合に用いられ、必要に応じて杭を設ける。
 また、床下全面が鉄筋コンクリートになるので防湿対策にも有効である。

  

[施工における留意点]
・土台は地面に近いため、耐久性の高い材料や、防腐加工された材料を使用するなど湿気や蟻害の予防が必要である。
・土台と基礎との間に厚さ3cm程度のパッキン材を入れる「ねこ土台」は、床下換気と土台の防腐性が高まる。
・土台の継手箇所は力が集中するところを避けて配置する。
・土台の腐食・防湿の点から、基礎の地盤面からの立ち上がりの高さは30cm程度確保する。
・通常、屋内の地表面は盛土を行い、屋外のそれよりレベルを上げておく。

軸組の仕口と継手について

 限界耐力計算における古民家の補強は、木造軸組もしくはそれに準じる軸組構法を対象としており、軸組の仕口については木材のめり込み特性を生かした形式の施工を行う。

◆ほぞ
 木材で、2つの部材を接合するため一方の材の端に作り出した突起のことをさす。もう一方の材にはこの突起を受ける穴 (ほぞ穴) がつくられる。
木造軸組工法の骨組みにおいては、材の継手、仕口に用いられる。

      

◆貫
 貫(ぬき)とは木造建築において、柱などの垂直材間に通す水平材のことをさす。水平方向の固定材として壁・床下の補強などに使われており、小屋組の場合は"小屋筋交い"や"振れ止め"がほぼ同じ役割を持つ。
壁、主に真壁に使用される貫は、柱を貫通させて楔で固めることにより、柱の曲げ耐力を建築に加わる水平力に対する抵抗要素とする働きを持っている。

   

◆差鴨居
 差鴨居の仕口にはさまざまな形状があるが、基本的にはほぞ差しで取り合い、車知栓、込栓等の栓で固定する構造になっている。

         

土壁・小壁について

 耐震要素の復元力特性をモデル化したもので比較したとき、1/15radまでの変形能力を有する耐震要素の中では、土壁の耐力と剛性が最も大きい。
 土壁を耐震要素として耐震設計を行う場合は、その大きな耐力と剛性、なおかつその変形能力が確保できるよう確実な施工を行う必要がある。
 土壁の材料となる土、すさワラ、そして下地の小舞竹は自然から採取・産出されるものであり、土壁はもともと地場の資源に依存して成立している構法である。
 そのため、使用材料の違いによる構法の地域性が発生する。施工の程度によっては、省略ないし簡略化される工程もあるが、いずれにしても、耐震要素として大きな役割を担っているという認識のもとで施工を行う。

   

筋かいについて

◆圧縮筋かい
 圧縮筋かいの耐力は座屈で決まるので、柱二つ割以上、または柱と同寸以上の材料を使うのが望ましい。圧縮筋かいの上端部に取り合う柱には大きな引き抜き力が作用するため、柱の柱脚および柱頭にはそれに耐えうる補強が必要である。また地震時には圧縮筋かいといえども引張力が作用するので、筋かいの端部や筋かいが取り付く柱の柱頭、柱脚は、抜け出さないように金物などで緊結しなければならない。
◆引張筋かい
 引張筋かいの端部や筋かいが取り付く柱と横架材の接合方法については、令46条に仕様が規定されているので参考にし、接合金物には専用のZマーク表示金物を使用する。
 ※筋交い(すじかい)とは、柱と柱の間に斜めに入れて建築物や足場の構造を補強する部材である。
 構造体の耐震性を強める効果があり、建築基準法では一定の割合で筋交いを使用することが義務づけられている。
 柱と梁の形づくる長方形は、接合部の強度に余裕がないと、地震や暴風などの水平力を受けたときに平行四辺形に押しつぶされるように変形してしまう。
 ここに対角線状に筋交いを加えることで三角形の構造を作り、変形を防止するのである。

伝統構法の耐震補強方法

 京町家などの伝統木造建築の保全・再生では、町家の特徴を把握して伝統構法に適した補強方法が用いられている。以下に、耐震要素別の一般的な補強方法を紹介する。

[基礎]
 調査により、不同沈下の現象や基礎コンクリートのクラックが見つかった場合は基礎の耐力を向上させる施工を行うこととなる。

◆玉石基礎の場合
①基礎の沈下は雨水が基礎下に侵入し、基礎の下の土が流出して起こる場合が多い。その場合は雨水の侵入を防ぐ手立てを併せて取る必要がある。

  

地盤の沈下の程度が小さい場合は、玉石の廻りに栗石を打ち込み地盤を固めたり、廻りにコンクリートを打ち鉄筋を配筋したりして、玉石との一体化を図る。
②沈下の程度が大きい場合は柱をジャッキアップした上、布基礎またはベタ基礎を新設する。
③柱と基礎の間に隙間が生じている場合、隙間が150mm以下ならば切石を重ね、40mm程度以下ならば鉄板や鉛の板で高さを調整する。モルタルは重鎮しない。
④礎石や柱脚部に土がかぶっている場合は、風が当たるように取りのぞくこと。
⑤漆には防腐性と通気性があると考えられているため、礎石と接する木口に漆を塗る方法もある。

◆布基礎の場合
 木造の基礎に鉄筋コンクリートが普及し始めたのは昭和50年以降だが、それまでの基礎はほとんどが無筋であると考えられる。
 耐震補強における工費全体の中で、基礎工事が占める割合は大きいので、現場の状況に応じて適切な補強方法を工夫する必要がある。

[柱]
①柱は基礎や土台と接している部分が腐朽や蟻害にあって傷んでいることが多い。基本的に腐朽している柱は根継ぎを行う。
②曲げがかからない柱は目地継ぎでも良いが、そうでない場合はT字形の目違いをつけた同型の部材を組み合わせ、栓を差して固定する金輪継ぎと呼ばれる手法が一般的である。その他継手には追掛け大栓継ぎ、鎌継ぎなどがある。
③大きな荷重が掛かる場合には添え柱を取り付ける。
④根継ぎ材は柱と同質材のシロアリがつきにくい赤みの多い部分を使うようにする。

[梁]
①構造上の重要な梁が蟻害などにより大きく破損している場合は梁の入れ替えをする。できる限り既存の仕口、仕上げに順じ、簡略化しないこと。

   

また、加工や取り付けの際、周りの材を傷めないように細心の注意をする。
②作業スペースの関係で上から梁を落とすことが出来ない場合は、金輪継ぎのように横から滑り込ませる継手にするなど工夫する必要がある。
③既存の仕口や継手部分は清掃の上、車知、込栓などに破損やゆるみが無いかを点検する。
ゆるみの補正を行う際、蟻落しの場合は木栓で、ほぞ差の場合は割楔で行う場合もある。
(やむ得ない場合には羽子板金物、L字金物、短冊金物などの金物を使う場合もあるが、金物は補助的に用いること。)

[土壁]
①小舞下地が露出するほど土壁が剥落している場合、または壁土が浮いている場合には、適当な部分まで土壁を落として、新たに壁土を塗り直す必要がある。
②貫を止め直し、えつり竹、小舞竹を銅線等で緊結する。
②こそげた古い壁土に少量の新しい土とすさワラを混ぜ、よく練り直してから壁を修復する。時間と場所に余裕がある場合は新土をねかせて使うことが望ましい。

[小屋組]
①梁が傷んでいる場合は添い梁、重ね梁を用い、既存梁と一体になるよう補強する。仕口の腐朽が見られる場合はボルト、補強金物等で補強する。
②母屋は杉丸太が使用されている場合が多く、長年の荷重で垂れ下がっていることがある。その場合は、古い母屋を新材で両側から挟み込んで補強する方法をとる。
③小屋組の剛性が不足している場合は補強材として小屋筋かいを入れる。

   

[荒壁パネル]
 荒壁パネルは、土壁のように地震に強く、揺れにも柔軟に対応できる。両面張りで壁倍率2.6倍(国交省大臣認定)の耐力があり、変形しても粘り強く耐えるので伝統的建物に向いている。

[仕口ダンパー]
 仕口ダンパーとは、木造軸組建物の耐震要素として実用化されている「制震ダンパー」の中でも、柱と横架材の接合部(仕口)に用いるものをさす。三角形の鋼板と鋼板の間に高分子材料(シリコン系、ジエン系、アクリル系等)の粘弾性体を挟み込んだ仕様になっており、柱・梁仕口部に取付けて粘弾性体をせん断変形させることで、地震荷重や風荷重のエネルギーを吸収して変形を抑制する。以下にその施工要領を示す。

  

◆仕口ダンパーの特徴
・建物の揺れを抑えるため崩壊を防ぐことができる。
・新築、改修を問わず木造在来軸組工法であれば個人住宅から寺社仏閣まで幅広い用途に適している。
・風揺れや地震時の建物変形を小さくして、揺れを早く止めることができる。
このように、仕口ダンパーを使うことで耐震性能(耐力や変形抑制効果)は格段に向上する。