名古屋およびその周辺の地盤災害(5)

(C)矢作川流域の震害
この地震ほ愛知県下では、ほとんどが海岸に近い埋立地に類するところで震害が激甚であったが、矢作川地域でほ海岸から8kmくらい奥に入ったところまで相当の震害を示したことと、約一か月後に再び三河地震の被害地となり、識者の注目をひいた。
両地震による被害と地盤との関係についての研究が、棚橋、佐佐、横尾、西村(1948)によってなされた。
横尾はそれぞれ両地震の直後に同地域を踏査して、部落別倒壊率をしらべて震害分布図を作成した。
この地域において、弾性波探査を実施して地下構造を調べた結果、住家全壊率は弾性波伝播速度200m/秒 程度の軟弱な表層の厚さに比例し、最大層厚9mの場合に全壊率40%に達し、900m/秒程度の地盤では全壊率が10%以下であることがみられた。

名古屋およびその周辺の地盤災害(4)

(b)愛知県下の震害分布宮村(1946)の調査報告から愛知県下で住家倒壊率が町村で4%以上,市で1%以上のところを主にひろってみると下記の通りである。

渥美郡  田原町 4.9% 野田町   9.3% 高豊村 15.6%
碧海郡  高浜町 5.0% 矢作町    8.4% 刈谷町 14.5% 依佐美村 22.4%
幡豆郡  西尾町 5.3% 横須賀村 8.8% 一色町 27.7%
西賀茂郡 三好村 8.6%
中島郡   明治村 11.3%
海部郡  南陽村  5.3% 鍋田村 19.8% 飛島村 31.2%
知多郡 阿久比村  7.3% 武豊村 8.0% 大野町 21.4% 富貴村 31.3%
半田市 4.7%
名古屋市北東部1.4%

愛知県下で震害がとくに著しかったのは,矢作川下流域、名古屋市南部とそれにつづく海部郡南部であることがわかる。
矢作川下流域および名古屋市南部についてはつぎに述べるように極軟弱地盤の発達した地域において震害がはなはだしいが、半田においても同様の傾向がみられ、山方新田では全壊家屋300戸以上を超える甚大な震害を生じた。