愛知県古民家の特徴について(10)

愛知県下に分布する古民家の形式について(10)

町屋の船枻造りは旧街道筋にみられ、江戸末期から明治にかけて中二階建の形式として現われている。
二階建となっても軒の出の部分に、登梁や挿肘木を採用し鼻桁(出桁)を付けて、天井を張った軒部をみることができる。
船柑造の形式は外観上と構造での呼称であって、間取りからの名称ではない。
初期の目的は、山間農家において雨や積雪に対して、軒の出が要求された実生活の体験と工夫から発生したものと考えられる。
それだけに特に古い形式がみられないし、上屋組の構造で下屋の構成が除かれ、軒回りに天井を張るなど、発達した様子を知ることができる。
また、一般的には18世紀以降になると架構造に変化がみられるが、船枻造では曲材の使用が少なく、直材で長尺物が採用されているのも特徴といえる。
平面では多室型で、喰違五間取型の土間側にひと部屋が張出した形である。
また、縦型に六室を並べ土間側にひと部屋を張出したのもある。
規模は桁行9間、梁間4間半から桁行10間、梁間7間半までの間に集中し大型の構えである。

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