愛知県古民家の特徴について(15)

愛知県下に分布する古民家の形式について(15)

しかし、この事例は尾張における平野部の四例の土座式であるから、事例も少なく、これが県下一般であったことにはならない。

長野県塩尻市の小松家(重文)や香川県細江家(重文)のように、土間に直接筵を敷き囲炉裏を設けた18世紀初頭の構えもある。他県の2例は山間部であり、愛知県の場合は比較的温暖な平野部である例であり、気候による差異があることが十分考えられる。
床張りは三河と尾張の事例で、先の旧山内宅と永井宅である。土座式と同様に「にわ」と「居室」とに二分され、上屋柱の建つ位置と側柱位置の高低差が五寸(15cm)になっている。上屋柱と下屋柱に高低差があるのは、先述の土座式の構えから床張りに発展して残ったと思われる。床張り材は板とは限らず、竹や木をすのこ状に並べて、その上に筵を敷いていた事例もある。

このすのこの事例は、三河の下山村で18世紀末から19世紀初期の建造とみられる農家で、昭和30年代まで使用されていた例がある。
土座式と同様に屋内での間で仕切は全くなく、囲炉裏を居室のにわ側に設け、にわからも煮炊をするのに便が計られている。屋内の住まい方や屋内作業の使用状況は、土座式と大差なく使用されていたとされる。

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