愛知県古民家の特徴について(28)

水屋構えは、屋敷の嵩上げや特定の石垣を積み上げた造成地よりも、建物自体の天井裏(小屋組)を利用する工夫が初期的なものであったかも知れない。それは、尾張の中心部を流れる庄内川河口の日比津(名古屋市)に、平地住居で洪水対策としての農家が存在していた。

建造期は江戸末から明治初期あたりのものであったが、天井裏に貴重品や食糧および仏壇などを収納できる用意があった。しかも、小屋梁に滑車が固定され、緊急の事態に備えたものだと古老が語ってくれた。このことは、輪中における水屋の建物が比較的新しく、19世紀中期以降に建造されたと判断できるのが少なくなかった。また、この時期に建替えられたかも知れない。屋敷の周りに残る大槇の古木などから推定しても、樹令150年まで遡ることができるかなと思うところである。特殊な事例は、海部郡立田村(旧輪中)に谷口家があって、屋敷を1.5mほど嵩上げし18世紀中期ごろと判断できる鳥居建の直屋が存在している。しかし水屋は存在していない。

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